前回話を始めたデジタルデータの世界の超入門シリーズです。
今回は写真・画像データの基本について簡単に説明します。
1.画素、画素数
写真や画像の話になると「画素数」という言葉を聞くことがあるでしょう。
スマホの性能の話でも、カメラの画素数が「✕✕百万画素」だとか「1億画素」だとか話をしています。
これが一体何を表しているかご存知でしたら、この節は飛ばして次の節へ進んでください。
スマホのカメラやデジタルカメラで撮影した写真は、実は様々な色がついた「点」が縦横に整列したものです。もっと分かりやすく(?)表現すると「点」ではなく、「正方形」を隙間なく縦横に並べたものです。
この「点」「正方形」のことを画素といいます。「画像の素」ですね。
各画素には、その位置での最適な色がついています。それをものすごく沢山並べることで画像として人の目に映ります。
この画素を目で確認するには、画像の一部をどんどん拡大すればOKです。その例を下に示します。
これは蓮の花の画像です。大抵の人なら「ああ、そうだね」と思ってもらえると思います。ここに写っている花びらや葉っぱの輪郭は普通に外で目にする実物のように滑らかな曲線に見えます。この画像は実は横方向に480個、縦方向に405個の画素が並んでいます。画素数は20万弱です。
では、この画像の一部を拡大してみましょう。例えば下図の赤い枠で囲んだ部分を選択してみます。
この赤線で囲んだ部分だけを拡大すると次のようになります。
花びらの輪郭が何だがガタついてきたような感じがしませんか?それでも「蓮の花の花びらだ」と言われれば、「そう言われればそうかも…」と感じる可能性があります。これで大体縦横に100個くらいの画素が並んだ画像です。画素数は約1万です。
更に花びらの先っぽを拡大してみましょう。
ここまでくると、明らかに画素の並びであることが分かると思います。これで「蓮の花の花びらだ」と言われても「そう?」くらいにしか感じられません。ちなみに、これは縦横に25個くらいの画素が並んだ画像です。画素数は600位です。
ここまで来ると画素について具体的なイメージが掴めたのではないでしょうか?
2.画素数が多いことの利点と欠点
では、スマホの広告でカメラの画素数がよく報じられるのはどうしてでしょうか?
簡単な答えは、より多くの画素があると、より細かいものまで写真として写すことができるからです。
先程の蓮の花の元々の画像は、480✕405画素で、約20万の画素を持っていました。その画像を拡大すると、すぐに輪郭がガタつき、もっと拡大すると画素自体がはっきり確認できるようになってしまいました。
この場合は蓮の花一つだったので、それだけを伝えるなら20万画素でも問題ないといえば問題ありません。
でも、数十人が集まる集合写真だったらどうでしょうか?20万画素のまま見ると、何となく誰がどこにいるか分かるかもしれませんが、一人ひとりの顔に画素が幾つ使われるでしょう?
一人ひとりの顔に十分な数の画素が割り当てられていれば、個人を識別することができます。でも、顔に割り当てられた画素数が少ないと、どの顔も殆ど同じようにしか見えないこともありえます。
このように、画素が多ければ多いほど細かいものまで画像として残すことができるというのが利点の一つです。
これと同じような意味合いですが、画素数が多いと、より大きく拡大しても自然な画像に見えるということも利点の一つです。画素数が少ないと輪郭線がすぐにガタついてしまい、自然な感じが薄れてしまいますが、画素数が多いと同じように拡大しても輪郭は滑らかなままの画像を得ることができます。
唯一の欠点は、写真や画像ファイルのサイズが大きくなってしまうことです。見た目を変えずにできるだけファイルサイズを小さくする技術も進歩しているので一概に言えない部分もありますが、基本的には画素数が多いとファイルサイズも増えます。
スマホに写真を残しておくにしても、パソコンに移して保存するにしても、画像1つあたりのファイルサイズが増えるので、スマホやパソコンのストレージに必要な容量も増えてしまうのは仕方がないことです。
3.画素の色数
さて、これまで画素の数について話をしましたが、この話の最後に1画素で表現できる色の数について話をしましょう。
3.1 白黒画像
まずは白黒画像の場合は、真っ黒から真っ白まで256段階で表現するのが現状では一般的です。数字で言えば、0が真っ黒で、255が真っ白です。
光と影のグラデーションの写真を想像してもらうと、「256段階もっと沢山表現できているんじゃないの?」と思われるかもしれません。きっとそれは正しい認識だと思います。
恐らく「何言ってるの?」と思ったでしょう。でも、光と影のグラデーションの写真を見たとき、わたしたちの目は画素一つ一つを認識しているのではなく、複数の画素を滑らかに平均化して認識しているのだと思います。
例えば、人の目が4つの画素を平均化して見ると仮定した場合、各画素の明るさが「255,254,254,254」なら、その画素の辺りの明るさはその平均値の「254.25に見える」という具合いです。
3.2 カラー画像
カラーの場合は、よく聞く三原色(赤、緑、青)で表現し、一色ごとに256段階あります。
(0, 0, 0)が真っ黒、(255, 0, 0)が真っ赤、(0, 255, 0)が真緑、(0, 0, 255)が真っ青、(255, 255, 255)が真っ白です。
色の数は256✕256✕256=16,777,216色です。更に白黒画像の最後で説明したように人の目の平均化によって、実際にはもっと沢山の色合いを表現することができると考えられます。
3.3 [番外] RAW画像
これは番外編です。少しだけしか話をしません。恐らく殆どの初心者には関係がないでしょう。でも、気になる方はちょっとみてみてください。
最近ではスマホでもRAW画像を保存することができるものがあると聞いたような気がします。
RAW画像というのは、各色を表現するときの段階を256段階ではなく、もっと沢山の段階に分けて表現できるようにした特別な画像です。
恐らく、よくあるのは1024段階、4096段階、もしかすると16386段階かもしれません。どうしてこんな数を使うのかというと、デジタル系の話によくある2のべき乗の数だからです。1024は2の10乗、4096は2の12乗、16386は2の14乗です。実は各画素の各色が10bit(ビット)、12bit、14bitで表現されています。(bitの説明は前回の話を見てください。)
これは通常の画像ファイルに比べると段違いにファイルサイズが増えます。なので、よっぽどのマニアか専門家でないと日常的に使うことはないと思います。
それでも、画像の色合いや明暗などを、後から調整することができる自由度は段違いに高いです。写真を撮影した後で「ちょっと暗すぎた」とか「ちょっと明るすぎた」と思ったとき、もっと明るく、又は暗く調整したくなります。こういうときに威力を発揮するのがRAW画像です。普通の画像を調節すると、特にグラデーションの部分が不自然に色の段差が見えるようになることがあります。但し、繰り返しになりますが、ファイルサイズは非常に大きいです。
では、画像・写真データの基本の一つである画素についての話はこれでおしまいです。